アブレーション治療(経皮的心筋焼灼術)
不整脈とは
心臓は弱い電気によって、1分間に60~70回のリズムで拍動しています。
その電気が正常に伝わらず、拍動のリズムが乱れることを不整脈といい、拍動が1分間に50回以下と遅くなりすぎる除脈性の不整脈と、1分間に250回~600回と速くなりすぎる頻脈性の不整脈に大きくわけられます。
不整脈の原因を取り除く治療
以前は、手術で胸を切り開いて異常な部分を取り除かなくてはならなかったため、患者さまの体や経済的な負担はとても大きなものでした。そこで、胸を切らなくてもよいアブレーション治療が開発され、日本でも急速に普及。現在では、不整脈に対して効果的な治療法として定着してきました。
アブレーションは、先端に電極のついたカテーテルを用いて頻脈性の不整脈の原因となる部分を取り除く治療です。
右のような専用のカテーテルを足の付け根から入れ、レントゲン撮影をしながら心臓まで到達させます。
その後、不整脈の原因となる部分を探して焼灼(しょうしゃく)します。当センターでは、3次元ナビゲーションシステムを導入し、より多くの不整脈を根治することが可能になりました。
治療の流れ
【治療前】
- 治療前の食事は絶食となりますが、2時間前に200mlの水分をとります。
- 検査着に着替え、弾性ストッキングをはき、尿の管を入れます。
- 90分前に点滴を開始。化膿止めの薬をのみます。
【治療中】
- 治療用ベッドに仰向けになります。同じ体勢が長時間続くので、何かあればスタッフに声をかけてください。
ベッドは低反発素材のマットを使用しています。腰痛のある方にも比較的楽に治療を受けていただけます。 - カテーテル挿入部(大腿)を消毒したあと、局所麻酔の注射をし、カテーテルを心臓まで挿入していきます。
- 到達後、心電図を観察しながらカテーテルを操作し、異常な部分を探す「マッピング」という作業を行います。
- 異常な部分がみつかったら、カテーテルの先端から高周波電流を流し、不整脈の原因となる部分を焼灼します。
このとき、軽い痛みや熱さを感じることがある時があります。 - これをくりかえし、異常な部分を取り除きます。そのため個人差はありますが、全体で3~6時間かかります。
【治療後】
- 採血、心電図検査をします。
- 絶対安静となり、カテーテルを挿入した足は翌朝まで曲げられません。 挿入部位と安静度の詳細はこちら
アブレーション治療に関するよくある質問
アブレーション治療は、経皮的心筋焼灼術ともいいます。
経皮的(けいひてき)とは、皮膚に2~3ミリの穴を開け、そこから治療をおこなう手技のことをいい、
焼灼(しょうしゃく)とは、カテーテルの先端から高周波電流を流して、その熱で異常な組織を焼くことをいいます。
当センターでは、大腿部からアブレーションカテーテルを挿入します。
「焼く」治療だけど、火傷(やけど)しないの?
焼灼する温度は50度~60度で、30秒~60秒間高周波電流を流します。
アブレーションカテーテルの先端にはセンサーが内臓されているので、高温になりすぎることはありませんが、治療中、胸に熱さや軽い痛みを感じることもあります。また、カテーテルの先端が触れている部分だけが焼灼されるので、1回の範囲は直径5ミリ、深さ5ミリ程度半球状で、必要以上の組織を焼灼することもありません。
1回の焼灼で終了するの?
異常な組織が完全に焼灼できるまで繰り返します。また、伝導経路の遮断など何ヶ所も焼灼が必要な場合も、すべてが完全に焼灼できるまでくりかえします。
カテーテル挿入部位と安静度について
挿入部位は、治療の目的と患者さまの状態によって異なります。
大腿動静脈(足の付け根)
足の付け根にある血管は太いため、太いカテーテルを挿入する場合や複雑な検査や治療を行う時も使われます。ただし、カテーテル挿入後の止血に時間がかかり、約6時間の安静が必要となり、足を曲げたりすることもできません。
上腕動静脈(肘の内側)
肘の内側にある血管は大腿動静脈ほどではありませんが、比較的太い血管なので、ある程度の太さのカテーテルを挿入する場合や大腿動静脈が使えない場合に使われます。カテーテル挿入後すぐに歩くことはできますが、しばらくの間、肘を伸ばした状態で固定します。また上腕動脈の近くに神経があるので、これに障害を与えないような注意が必要になります。
橈骨動脈(手首)
手首の血管は、止血の痛みや時間も少なく、検査・治療後の運動にも制限がかからないなど患者さまの苦痛が最も少ない部位です。しかし、血管そのものが細いため太いカテーテルは使えません。
福井厚生病院 循環器センターでの症例
畑仕事ができるくらいの元気な毎日に、突然の動悸
持続性心房細動、重症心不全、大動脈弁狭窄症、慢性腎不全透析中の女性、Aさんは、かなりの高齢の方です。もともとは畑仕事を趣味にしているくらい元気な毎日を送っていたのですが、心房細動による突然の動悸、引き続き悪化した心不全による息切れで急変されました。すぐにかかりつけの病院で治療を受けた後、透析の導入と不整脈、心不全のコントロールということで、当院へ紹介となりました。入院してからも、一分間に160回を超える非常に速く、不規則な脈を繰り返していました。じっと寝ていても呼吸困難があり、あえいでハーハーと浅い息になり、血圧も70mmHgのショック状態となりました。まずは、もともとの慢性腎不全に対して透析治療を開始し、2週間ぐらいで体内の水分量はコントロールがついてくるようになりました。
そして、いよいよ心房細動の起源(発生部位)に対して、カテーテルアブレーション治療をすることになりました。局所麻酔で両脚の付け根から細い管(カテーテル)をいれて、左心房、肺静脈の交わるところから丹念に不整脈の起源を探していきました。そして、3次元のナビゲーションシステムで誘導しながら、不整脈のもとを封じ込めるように高周波で熱を加えて治療をしました。
治療後は、まるで嵐が過ぎ去って青空が広がったかのように、脈はピタリと安定し、1分間に70回の規則正しい脈となりました。治療の翌日、回診の際「動悸も全くなくなり、息切れもなくなった」とAさんはとても喜ばれていました。心不全もよくなりました。術後の経過も良好で、心房細動の再発も全くなく、数日後に健康な人と同じ規則正しい脈を保って、元気に自宅に帰られました。
アブレーションによる不整脈の治療
手術で胸を切らなくても不整脈に効果的なアブレーション治療。
当センターで行った治療の症例を、不整脈のタイプ別の動画でご覧いただけます。
上の動画メニューからご覧になりたい病名をクリックしてください。
- 心房細動 再生時間:3分57秒
- WPW症候群 再生時間:4分24秒
- 心室性期外収縮 再生時間:3分04秒
- 心房粗動 再生時間:2分44秒
注意:動画をご覧になる場合は、メニュー上の動画リストから選んでください。
不整脈の画期的な治療システム -3次元ナビゲーションシステム-
3次元ナビゲーションシステムというシステムがあるのをご存知でしょうか?
3次元ナビゲーションシステムとはアブレーション治療(経皮的心筋焼灼術)のときに使われます。アブレーション治療は不整脈を根治するのに大変有効な治療法ですが、不整脈のなかでも発生部位を見つけるのが極めて困難なものもあります。しかし、このシステムを用いることで、そのような不整脈の多くを根治することが可能になりました。
通常のエックス線透視を用いる方法では、心臓の構造が見えないため、心臓内でのカテーテルの位置はおおよその位置しかわからず、技術者の経験と勘に多くを頼っていました。しかし3次元ナビゲーションシステムでは心臓の輪郭を正確に立体画像として構築することができ、3方向から磁場をかけることによって、カテーテルの先端部の位置を1ミリ単位の正確さで表示することができます。さらに心臓の電気現象がカラー表示されるため、不整脈の発生部位が一目瞭然となります。
当センターでは2004年末よりこのシステムを導入しており、 アブレーション治療で力を発揮しています。
また2011年7月には、GPSと同様の原理を用いた最新のハイブリットテクノロジーによる3次元ナビゲーションシステム『CARTO®3』を導入しました。これにより治療手技の時間短縮や、患者さまの被ばく量の軽減などが期待できます。
2011年7月 磁界と電界を利用した最新3次元ナビゲーションシステムを導入
2011年7月、当センターに最新の3次元ナビゲーションシステム『CARTO®3』が導入されました。
最大6本のカテーテルを同時に描出
これまでのシステムで描出されるカテ―テルは限定されていましたが、新しいシステムは最大6本の電極カテーテルを同時に描出することができるようになりました。

見づらいカテーテルの向きや電極も正確に確認
X線以外の方法でもカテーテルの位置が確認できるようになり、X線では分かりづらいカテーテルの向きや重なった電極なども正確に確認することが可能になりました。このことにより、患者さまが手技中に被ばくするX線量の軽減が期待されます。
きれいに速く画像を構築
1秒間に60回のスピードで位置情報をサンプリングすることにより、高解像度の画像を素早く構築することができ、手技時間の短縮が期待できます。
そのほかにも、手技の効率化を図る機能が搭載されています。
※CARTO®3は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのグループ会社であるバイオセンスウェブスター社が研究開発したシステムです。
