チーム医療で活きる病院薬剤師
薬剤課では薬の調剤だけでなく、患者さまが安全かつ有効にお薬を使っていただけるように、お薬に関しての説明・指導を行っています。また医師や医療スタッフへ薬剤についての情報提供や病院内で使われる薬剤の管理も行っています。
全自動錠剤分包機(株式会社 湯山製作所 PROUD 406)を導入しました
病院薬剤師の業務の一つに「調剤」があります。
今までこの調剤は記載されている全ての薬剤を個別の棚から集めてきて「分包機」という機械にかけて食事区分ごとに「一包化」していました。一包化はひとまとめになるので飲み間違いがなくなり患者さまにとって有用です。
しかし、棚から集めてくる作業、分包機で一包化する作業には薬剤数によっては煩雑で時間もかかるものでした。
そこで電子カルテの導入とあわせて全自動錠剤分包機を導入しました。
各薬剤は分包機の中にあらかじめ充填しておき、処方オーダーを分包機に転送すると自動で一包化してくれるのです。調剤業務が効率的になり調剤時間が短縮しました。この時間短縮はすごい効果があり、処方箋1枚に10剤の記載があるとして、
その薬剤を集める時間を入職3ヶ月の職員と10年の職員ではそれぞれ約130秒と65秒でした。自動分包機に確認して転送する時間は約12秒でした(表1)。


機械の分包後にさらに薬剤師が最終チェックをして調剤を完了させます。
こういった調剤の効率化は薬剤師が病棟での有効で安全な薬物投与に関する業務へとシフトすることが可能になります。つまり感染管理チーム(ICT)、栄養サポートチーム(NST)など多職種で構成されるチーム内で薬剤師が力を発揮する時間に充てることができるのです。
医療現場では、それぞれの経験や知識を活かしたさまざまな職種をもったスタッフがいます。私たち薬剤師も薬剤に関した知識や経験を活かし、さまざまなチーム医療や教室に積極的に参加し患者さまの治療に役立ちたいと考えています。
- ICT(院内感染対策チーム)
- NST(栄養サポートチーム)
- 糖尿病教室
- 肝臓病教室
- クリニカルパス
調剤業務
医師が書いた処方箋に基づき、薬を調合します。その際、薬の飲み合わせや量・種類、他の診療科で同じ薬は出ていないかなどチェックし、疑問点があれば医師に確認し、必要があれば訂正してもらいます。
服薬指導
入院患者さまが飲まれたり使われている薬の薬効や用量、用法、副作用、相互作用など、薬に関するいろんな情報を分かりやすく説明させていただいています。
医薬品情報管理業務(DI業務)
薬の効果や副作用など薬の情報を収集し、医師や医療現場スタッフに常に最新情報を提供します。患者さまに適切な薬が適切な量で処方されるよう努めています。
薬剤管理
病院で使われている薬について使用期限や保存の仕方がきちんとされているかなどチェックし、患者さまが安心して安全な薬を服用できるよう管理しています。
病院で働く薬剤師は調剤だけでなく、医師を始めとした医療スタッフと一緒に患者さまの治療に深く関わっています。 そんな薬剤師の活動を紹介します。
感染症治療における薬剤師の役割
こんにちは。突然ですが、当院の薬剤課は感染症診療のサポートに力をいれています。その活動の一部を紹介します。
Q.「感染症診療にかかせないものは何だと思いますか?」
「基礎疾患」「既往歴」「疾患疫学」「微生物学」「抗菌薬」「検体」「検査値」「画像検査所見」・・・。えっ?動物との接触歴も、ワクチン接種歴や、輸血歴、旅行歴(海外含む)、虫さされ、薬物アレルギー、もっといろいろあるでしょ?という声が聞こえてきそうです。
この問いを変えてもう一度
Q.「感染症診療にかかせないものは何だと思いますか?」
この問いにすると職種別にいろんな答えが返ってきそうです。
我々薬剤師がすべきことは「適正に抗菌薬を使ってもらうことをサポートすること」です。
最近、この「適正」の意味するところの議論を多く耳にします。果たして「適正」とは何でしょうか?何をもって「適正」なのでしょうか?
私の考えは「一症例ごとに必要性を吟味し、必要であれば投与方法・投与量を十分検討し、十分な期間使用する。治療効果は臓器特異的なパラメータで判定する」ことだと思います。
近年、「抗菌薬の使用届出制度、許可制度などの導入を!」という風が業界に吹いています。この制度のもたらすものは抗菌薬使用総量が減少すること、あいまいな根拠の投与を減らすこと、指定されていない抗菌薬に逆に使用が偏ることなどが言われています。
しかし、この制度自体は一定の効果があり否定はしませんが、そもそも届出・許可制をしいたことで抗菌薬の使用は減ってもいいのでしょうか? (何かに偏ってもいいのでしょうか?)
使用量に比例して耐性度を高める微生物がいることも確かです。そのため総量把握の重要性も認識しています。しかし、大切なことは個々の目の前の患者さんの予後改善にあると考えます。
抗菌薬は細菌感染症を治療するために存在します。投与方法は「静注薬は1日2回」ではありません。近年盛んに言われているPK/PD(pharmacokinetics/pharmacody
namics)理論という薬物動態を駆使した投与法でも日本の抗菌薬投与量は少ないです。
画一の投与方法では患者さんを救えません。しっかりした量を十分な期間使用することがキモです。従って、先述の「届出・許可制」や「使用総量」では語れないこと、本質に迫れないことがあります。これらの理由から当院の薬剤師は、より個別の症例に踏み込んで治療に介入しています。
では実際の介入のひとつを紹介します。
86才・女性で左大腿骨頚部骨折の手術のため入院。術後経過は良好でしたが、肺炎を発症。主治医はABPC/SBT(ユナシンS) 1.5gを1日2回で投与開始しました。 しかし発熱は治まらず、検査値は悪化していました。そこで主治医は以前の痰培養から検出されている P.aeruginosa (緑膿菌)が原因の可能性を考え、 抗緑膿菌活性をもつ抗菌薬について薬剤師に相談しました。
緑膿菌が原因の可能性も含め、一度喀痰のグラム染色をしてみましょう

その結果、莢膜をもつグラム陰性桿菌が見え、K.pneumoniae (肺炎桿菌)と推定、貪食もされていました。
ABPC/SBT が腎機能を考慮したとしても投与量・投与間隔ともに少ないため、その特性を活かせていません。K.pneumoniae も推定されているため腎機能を考慮してもABPC/SBT 1回 3g を8時間ごとに増量する、またはCFPM(マキシピーム) 1回 2gを12時間ごとの投与を勧めます(主治医がCFPMを使いたい意向を尊重)
主治医は CFPM を選択。3日後に再度グラム染色
前回と同様の推定菌 K.pneumoniae の減少がみられません。
CFPMを最大量投与していてもこの鏡検所見のため変更を勧めます。
i) CPFX(シプロキサン) を 1回 300mg で12時間ごとの投与
ii) MEPM を 1回 1g で12時間ごとの投与
主治医は i) CPFX を選択。再び3日後にグラム染色.。
推定菌 K.pneumoniae は激減しほとんど見られなくなっています。
このままCPFXで治療して良いと思います。
⇒肺炎は改善されました。
喀痰の培養からは緑膿菌 2+ と MRSA 少数と後日報告されました。
以上をまとめると、
グラム染色によりしっかり原因菌を推定したこと(喀痰培養結果の示す菌が必ずしも原因とは限らない)
推定菌の特徴を把握して抗菌薬を選択したこと(ESBL という抗菌薬を壊す酵素を産生することで知られる菌種である。今回はこれを産生していた可能性を否定できない)
腎機能を考慮しながら抗菌薬を最大量使用したこと
抗菌薬の治療効果にグラム染色も用いたこと
これらが今回の治療成功に導いた可能性が高いと思われます。
グラム染色、抗菌薬使用量、細菌の知識の重要性、疾患疫学を再確認した症例でした。
この症例を振り返ってみましょう。
いくつかポイントがあります。
グラム染色を行わなかった場合どうであったか
日本の保険診療の一般的投与量だった場合どうであったか
培養結果情報のみで治療するとどうであったか
この菌は緑膿菌やMRSAよりも肺炎を起こす可能性が高いことがいわれているため今回の肺炎のターゲットとした。 一方、一般的な投与量だった場合、量の不足の懸念が払拭されないことがあげられる。また、培養から検出されている MRSA を原因菌として抗MRSA薬で治療した場合、今回の推定菌 K.pneumoniae には効果がない。
以上をまとめると、
グラム染色によりしっかり原因菌を推定したこと(喀痰培養結果の示す菌が必ずしも原因とは限らない)
推定菌の特徴を把握して抗菌薬を選択したこと(ESBL という抗菌薬を壊す酵素を産生することで知られる菌種である。今回はこれを産生していた可能性を否定できない)
腎機能を考慮しながら抗菌薬を最大量使用したこと
抗菌薬の治療効果にグラム染色も用いたこと
これらが今回の治療成功に導いた可能性が高いと思われます。
グラム染色、抗菌薬使用量、細菌の知識の重要性、疾患疫学を再確認した症例でした。




















